私は、本を読むのが好きだった。いつも読んでいたわ。自分の部屋で、或いは薔薇の薫る中庭で。
私は、外で遊ぶのが好きだった。小鳥と一緒に歌を歌ったり、木になっている果実を食べたりしたわ。よく花を摘んで花冠を作ったりしたわ。雨上がりの時の、湿った土の感じが好きだった。
私は、よく人形で遊んでいたわ。いつも一人だった私の友達だったわ。エリーゼにリリアにビアンカ……。兎に角沢山の友達と遊んだわ。よくお洋服も作っていたわ。不器用だけれど、頑張って作ったわ。よくお母様に褒められてたわ。
私は、よくピアノを弾いていたわ。お父様の部屋にある楽譜を見て、一人で弾いていたわ。紙に音符を並べたりしたわ。……とても楽しかったわ。
お母様は毎日、私にこう言ったわ。決してお外に出てはいけない。お約束を破ってはいけない。もし破ったら、恐ろしいことになるといつも言っていたわ。いつも見ていた、お外の世界。私は、家から出たことがなかったから、とても憧れていたわ。窓から見える、お外の世界。それは一体、どんなものかしらといつも考えていたわ。お母様はいつもお外は怖いから、出ちゃダメよ。絶対に一人で出ちゃダメよと言っていたわ。なのに、それなのに……。


その時になって感じたの。嗚呼、私はもうあの頃には戻れないんだってもう、楽しかったあの日にはもう戻れないんだって。あの時、母の言いつけを守っていればよかった。好奇心が勝ってしまった。唯の、ほんの出来心だったのに。


あの時の自分へ、幼かった自分にさようなら。眩しかったあの日に、さようなら。
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アリス同罪イノセントから考えて書きました。自分の幼い頃を思い出しながら、大人になっていく自分に怯えているような話になってしまったので、少し違うのかなと考えましたけれど、短編としてはまあいい感じのものになったと思っています。
タイトルはもう少し捻った方が良かったのかなと思っています。
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