私は、いつも外を見ていた。飽きる事無く、何も変わらぬその風景を見続けていた。たまに大陸からの風が吹き、流れていく雲をじっと見ていた。時間というものは無限で、何も変わっていないように見えた。いつ何時夜が来たのか、朝が来たのか覚えていない。ずっと同じ風景のままのように思えた。たまに、冷たい鉄柵に手を掛けながら。
――しかし、これは私の選んだ道だ。あの豪華絢爛で、優美な生活に別れを告げ、自ら捕虜となった。いつも着ている綺麗な服を捨て、今や囚人と変わらぬ生活を送ってきた。きっと人は笑うだろう。惨めであるだと、そんなものなら死んだ方がましではないか、と。
私は待ち続けているのだ。あの人を。気高く野に咲く百合のように、決して折れる事の無い精神を持った、あの女王を。



……あれから幾月が経っただろうか。領地は廃れ、大地は荒れ、城には誰一人として生き残っておらぬ。それでも私は進み続けてきた。あの光景を、築いてきた領地を、人々を取り戻すために。何故それを忘れる事が出来よう。心の奥に仕舞う事が出来よう。
この景色は、高台から見える景色はあの頃のままだ。何も変わっておらぬ。この風景は今も変わらぬ。いや、変えてはならぬ。そのために私がいるのだ。私が此処に舞い戻って来たのは先代の墓参りのためでは無い。私自身のためなのだ。
残してきた者のために、私は振り向かない。私は、先に行く。


さあ、いざ行かん。女王よ。その丘に平和が訪れるまで。
さあ、飛び立て。女王よ。眩い未来のために。
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Troubadourから考えました。アリカ様がPVで赤いドレスと黒いドレスを着ていたので、そこから二人の女王として書きました。前作よりもいい出来栄えだと感じています。
(C) ALI PROJECT Dilettante NET 2013