小さいころ、わたしとあなたには秘密の場所があった。
煉瓦造りの小さな家が並ぶ道をもう少し先にゆき、
子供しか通れないような細い小路をぬければ、そこに。
いちめんにマリーゴールドが咲き乱れる、秘密のお城。
お日さまのような黄色の中で、よくあなたと2人で遊んだわ。
お母様に叱られてへこんでいるときも、
お友達ができてうれしかった日も、
あの花園はいつも私たちのそばにあった。
朝、少し早起きして花園へ行くと、あなたが小鳥の歌声とあそんでいた。
私が1人でお花遊びを始めると、隣からあなたの綺麗な
ボーイ・ソプラノの歌声が聞こえてきた。

 でも、だんだん2人は大きくなって、
花園にゆくことはほとんどなくなってしまった。
しばらくして、あなたは1人、学校に入るために遠い、遠いところへ行ってしまった。
私は、この街に残った。
あなたはここを去る時、わたしに小さなオルゴールをプレセントしてくれたわ。
それは、あなたが綺麗な声で歌ってくれたあの歌―。

それから、わたしはすっかり大きくなった。
恋人ができたり、振られてしまったり、悲しいこともあった。
あなたはまだ帰ってこない。
ある時、引き出しの中から埃をかぶった小さな箱―あなたがくれた
オルゴールを見つけた。
長い時を経て、ねじが再び回る―。

 その日の午後、子供のころの秘密のお城に行ってみたわ。
あのころと変わらない風景。一面のマリーゴールド。
そこに、懐かしい歌が聞こえた。
ただ、あのころのボーイ・ソプラノではなく、
甘美なテノールで。
そこにいたのは、あなた。わたしに気づき、歌うのをやめた。
そして、優しい声で言う。
「マリーゴールドの花ことばを知っている?」
「ええ、知っているわ。可憐な愛情、別れの悲しみ。」
「そうだね。そして・・・」
あなたは一度黙って、そして私に近づきながらもうひとつ、言った。
「変わらぬ愛。」

そう言って、あなたは私をそっと抱き締めた。
私は目を閉じて、昔の甘い時間を思い出す。
まわりじゅうのマリーゴールドたちは、輝く夕日に照らされて、
宝石よりも美しく咲き乱れていた。
前回が少々テーマが重かったので今回は初恋をテーマに書いてみました!
なんかありきたりな気がするけど、楽しんでいただけたらうれしいです♪
そして、そろそろタイトルをひねりたい・・・。
(C) ALI PROJECT Dilettante NET 2013